マラソン雨対策でワセリンは塗るな?冷えを招く3つの落とし穴と正しい活用法

雨の日のマラソンレース、皆さんはどのような準備をしていますか?

スタート前の整列で震えないように、さまざまな工夫を凝らしていることでしょう。

インターネットやランニング仲間からの情報で、こんな「定説」を耳にしたことはありませんか?

「ワセリンを全身に塗れば、雨を弾いて寒くない?」

「ホットジェルを塗っておけば、体がポカポカして動きやすい?」

「結局、雨対策は何が正解で何が間違いなの?」

これらは、多くのランナーが抱く共通の疑問です。

しかし、最新のスポーツ生理学の研究によると、実は逆効果になっている可能性があります。

本記事では、なぜ塗る対策が冷えを招くのか、そして本当に効果的な対策とは何なのかを解説していきます。

目次

ワセリンやジェルの3つの落とし穴

雨対策の定番とされるワセリンやホットジェル。

水を弾くイメージや、塗った瞬間の温かさから信頼しているランナーは多いはずです。

しかし、体の仕組みを考えると、これらは必ずしも「防寒」の味方ではありません。

その理由を、3つのポイントに絞って解説していきます。

1. 汗が乾かず「濡れ戻り」で冷える

「ワセリンを厚塗りして雨を弾く」

これは一見理にかなっているように思えます。 

確かに外からの雨水は弾きますが、問題は内側から出る「汗」の行方です。

ワセリンなどの油分は、皮膚にラップをするようなもの。 

普段なら蒸発して体温調節を助けてくれる汗が、油の膜に閉じ込められて逃げ場を失ってしまいます

すると、汗は液体のまま皮膚の上に残り、ウェアの内側をぐしょぐしょに濡らしてしまうのです。

ここで怖いのが「水の熱伝導率」。

水は空気の約25倍も熱を伝えやすい性質を持っています。

つまり、蒸発できなかった汗が冷やされると、その冷たさがダイレクトに体に伝わってしまうということ。

レース後半、ペースが落ちて体の熱を作る力が弱まったとき、この「濡れた層」が体温を一気に奪い、低体温症のリスクを高める原因になりかねません。

2. ホットジェルは「脳の錯覚」

「寒いからホットジェルを塗る」というのも、よくある対策です。

塗った直後にカァーッと熱くなる感覚、確かに効いている気がしますよね。

しかし、研究によるとトウガラシ成分(カプサイシン)入りのジェルを塗っても、実際の皮膚の温度は上がっていないことが分かっています。

あれは実際に熱を発しているのではなく、脳に「熱い!」という信号を送って錯覚させているだけ。

激辛カレーを食べて口の中が熱くなるのと同じ原理です。

口の中は熱く感じますが、火傷しているわけではありませんよね。

怖いのは、体が冷えているのに皮膚感覚だけ「温かい」と勘違いしてしまうこと。

本来なら「寒いから上着を着よう」と判断すべき状況でも、そのサインを見逃してしまい、気づかないうちに深刻な冷えに陥る危険性があります。

3. 皮膚がふやけて「マメ・靴擦れ」に

ワセリンで汗を閉じ込めることの弊害は、冷えだけではありません。

長時間、皮膚が水分(汗)に浸かった状態になると、指先がお風呂上がりのように白くふやけてしまいます。

これを専門用語で「浸軟(しんなん)」と言いますが、ふやけた皮膚はとても脆い状態。

そこに雨で濡れたソックスやウェアの摩擦が加わるとどうなるでしょうか。

普段なら何ともない刺激でも、簡単に皮が剥けたり、大きなマメができたりします。

正しい雨対策とワセリンの使い所

ここまでの話で「ワセリンやジェルは意味がないの?」と思われたかもしれません。 

決して全否定するわけではなく、大切なのは「使い方」と「目的」を変えることです。

生理学的に理にかなった、雨のマラソンを走り切るための正解を紹介します。

局所使いで「摩擦」を防ぐ

ワセリンの最大のメリットは、滑りを良くすることです。

「防寒」や「雨除け」として全身に塗るのではなく「摩擦防止」としてポイント使いしましょう。

脇の下

太ももの内側(股擦れ防止)

足の指の間

乳首や心拍ベルトが当たる場所

このように、ウェアや皮膚同士が擦れる場所に限定して薄く塗るのが正解です。 

これなら汗の蒸発を全体的に妨げることなく、皮膚トラブルだけを効果的に防ぐことができます。

「塗る」より「着る」で守る

では、寒さと雨はどう防げばいいのでしょうか。

答えはシンプルで、化学成分に頼らず物理的に守ることです。

ホットジェルやワセリンの膜に頼るよりも、高機能なインナーウェアを活用しましょう。

最近では「撥水インナー(ドライレイヤー)」と呼ばれる、肌を常にドライに保つアンダーウェアが人気です。

これは網目状の生地でできていて、かいた汗を素早く上のウェアに移動させ、肌に戻さない仕組みになっています。

肌が濡れていなければ、汗冷えは劇的に防げます。

ジェルは「気休め」と割り切る

ホットジェルを使いたい場合は「これで温まる」とは過信しないことが大切です。

「最初の数キロ、寒さの不快感を紛らわせるため」と割り切って使う分には良いでしょう。

ただし、本当に寒い日はジェルに頼らず、以下のアイテムを装備してください。

キャップ(帽子): 頭は熱が逃げやすい場所です。

アームウォーマー: 暑くなったら手首に下ろせば体温調節が容易です。

ビニールポンチョ: スタート待機中の保温にはこれが最強です。

自分の熱を守れるのは、錯覚ではなく物理的な断熱層だけだということを覚えておきましょう。

まとめ

雨のマラソンは準備が9割と言われます。

正しい知識を持っていれば、雨は敵ではなく、ライバルに差をつける味方にもなり得ます。

今回のポイントを整理しましょう。

  1. ワセリンは「保温」目的で全身に塗らない
  2. ホットジェルの温かさを過信しない
  3. 対策の基本は「肌をドライに保つ」こと

「塗ればなんとかなる」という考えを捨て「どうすれば体を濡らさず、熱を逃がさないか」を考えること。 

それが、雨の過酷なレースを笑顔でフィニッシュするための近道です。

次の雨レースでは、ぜひこの「塗らない勇気」と「正しい装備」で挑んでみてください!

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